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○尾辻秀久君 一年前に、私は二日続けてこの壇上に立たせていただきました。最初の日は今日と同じ代表質問でありました。次の日は山本孝史先生の哀悼演説でありました。先生が尾辻に頼んでほしいと言っておられたとお聞きをいたしましたのでお引き受けしたのでありますが、お見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳なく存じております。 先生の一年忌の質問でもありますので、型破りではありますけれども、山本先生が大変心配しておられたにもかかわらず、今日の状況が更に悪くなっている問題について、まず質問をさせていただきます。 山本先生を中心にして、私たちは自殺対策基本法を制定いたしました。今、日本では年間三万人の方が自殺で亡くなっておられます。総理が施政方針演説で述べられたとおりであります。三万人といいますと、東京マラソンの全出場者の数であります。この十年間で三十万人、毎日九十人もの方が自ら命を絶たざるを得ない状況に追い込まれています。 自殺する人の数が急に増えたのが平成十年の三月だったということを総理に是非知っておいていただきたいのであります。つまり、北海道拓殖銀行や山一証券が破綻した年の年度末、決算期に、月の自殺者の数が一・五倍に急増し、年間では八千人以上も増えたのです。 今日の状況は、平成十年よりもっと深刻であります。このことを大変心配いたしております。自殺実態白書によりますと、自殺は平均して四つの原因が重なって起きており、そのきっかけとして一番多いのは経済的な理由です。まず、私たちは人の命を救わなければなりません。自殺者統計の緊急公表など、万全の対策をお願いいたします。 総理、是非一度、自殺の多い東尋坊や秋田などで活動しているボランティアの方々の生の声をお聞きください。お聞きいただけますかというのが最初の質問であります。お聞きになれば、総理もじっとしてはおれなくなると存じます。 次に、最高の自殺対策であり、今日の緊急課題である雇用問題についてお尋ねをいたします。 私たち参議院は、一緒に頑張りましょうという思いを込めて、雇用と住居など国民生活の安定を確保する緊急決議を行いました。この機会に、全会一致となるべく努力をされた皆さんに敬意を表します。 今、早急に解決すべきは職を失った派遣社員の支援でありますが、雇用については後でお尋ねすることとして、まず、こういう派遣制度がつくられてきた経緯、背景を検証してみます。 政府は、規制改革を目指して平成六年十二月に行政改革委員会を発足させております。以来、会議は名称を変えつつ継続され、数度にわたって、派遣対象業務の原則自由化など、段階的に労働者派遣法を変えてきました。 私は、この間の会議の在り方に強い疑念を持っております。発足当時から委員として会議に参画し、数度の取りまとめに当たったのは、企業の一経営者であります。経営者の視点で規制改革が進められ、その結果、派遣の大量打切りとなり、多くの人を失業に追い込んだのであります。私たちの決議が、政府にだけでなく、企業にも注文を付けているゆえんであります。これほどの厳しい事態を招いたことについて、規制改革会議は少なくとも結果の責任を取らなければなりません。 さらに、規制改革会議には言っておかねばならないことがあります。それは、会議が自らの主張をするのは自由ですが、その主張が己の利権につながっているという疑惑を持たれてはいけないということです。小泉改革を利権にしたと言われてはいけません。規制改革会議でそのことを主張した人の関係会社が、真っ先に株式会社の病院を造ったと言われています。 規制改革会議に問いたい。医療を自らのビジネスチャンスにしていませんか。理容、美容や保育にも手を伸ばそうとしていませんか。介護の世界を利益追求の場としてむさぼり、自家用ジェット機を買った会長がいたことを忘れてはいませんか。バス、タクシーの事故が増えたことに対する反省はないのですか。 今、話題になっておりますかんぽの宿についても同じ疑惑が持たれています。鳩山総務大臣は李下に冠を正さずと言っておられます。ここまで申しましたことに対して、総務大臣の御所見をお聞かせください。 関連して、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。 規制改革会議が主導して市販の薬の市場をなし崩しに開放してきました。これがインターネット販売にも及ぼうとしています。簡単に買える利点がないわけではありませんが、十分な知識のない未成年が催眠鎮静剤を大量購入し自殺を図るなど、多くの問題が生じております。処方の重要性が考慮されず、副作用の強い薬が個数制限なしに販売された結果であります。今後どのように対応なさるおつもりか、お尋ねをいたします。 経済財政諮問会議については、昨年の質問でも国会決議など無視すればいいのだと言い放ったその傲慢さに触れました。経済財政諮問会議は、新自由主義、市場原理主義を唱えてまいりました。平たく言えば、日本をアメリカのような国にすればいいのだと言ってきたのであります。それが間違いであったことは、今回の世界の不況が証明をいたしました。その責任は重く、私は経済財政諮問会議と規制改革会議を廃止すべきと考えますが、総理はどのような総括をしておられるのか、お尋ねをいたします。 また、このように審議会を隠れみのにするやり方を改めて、政治と政府が前面に出て責任を明確にすべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。 次に、雇用問題について伺います。 国内失業者数は急増しております。本日、今朝でありますけれども、発表された厚労省の調査では、昨年十月から今年三月までの失職予定の非正規労働者は十二万五千人に及ぶ見込みであり、十一月の調査から初めて十万人を超えました。厳しい経営環境はあるにせよ、今まで企業を支えてきた労働者を簡単に切り捨てることは企業の社会的責任の放棄であります。企業には雇用維持確保に全力で努めるよう要請いたします。特に、ワークシェアリングの導入を前向きに検討していただきたい。 一方、政府は企業に対し雇用維持のための十分な支援を行うとともに、離職者の円滑な再就職、職業訓練の実施など必要な支援を行うべきであります。住居の確保など生活の安定に不可欠な支援措置も講じるべきであります。 先日、経団連と連合から、雇用安定・創出に向けた労使共同宣言がなされました。まさに労使一体の叫びであります。百年に一度の不況というなら、百年に一度の雇用対策を取るべきであります。私は、今こそ清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要だと考えます。総理も施政方針演説で異例な対応が必要ですと述べられました。また、日雇派遣を原則禁止するなど労働者派遣制度を見直すとも言われました。更なる雇用対策をどのようにお取りになるおつもりか、お伺いをいたします。 今、清水の舞台から飛び降りる覚悟でと申しました。当然、財政はどうするという議論になります。財政について伺います。 政府は、経済財政の中長期方針と十年展望を閣議決定いたしました。その中で、財政健全化に向けて二〇一一年度までにプライマリーバランスを黒字化させるというのは困難になった、しかし目標はそのままにするとしました。これは分かりにくいです。はっきりと、二〇一一年の目標達成は無理になったので、新たに何年を目標にして黒字化を目指すと言うべきです。 そもそも総理は、当面は景気対策、中期的には財政再建と言っておられますし、日本経済全治三年とも言っておられます。そうであるならば、これからの三年間はひたすら病を治すことに集中する、その間はためていたへそくりも使うし、借金は少し増えるかもしれない、しかし三年後、病気が治ったらばりばり働いて稼ぐ、財政健全化はそのときの話とめり張りを付けてお話しになった方が国民にも分かりやすいですし、一体感を感じるのではないでしょうか。総理、どのようにお考えになりますか、お尋ねをいたします。 骨太の方針二〇〇六では、歳出歳入一体改革による財政健全化を標榜しながら税の自然増収と歳出削減を柱としただけで、税制抜本改革については具体的に述べていません。この度の中期プログラムで初めて、社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通しを踏まえつつ、経済状況を好転させることを前提に、消費税を含む税制抜本改革を二〇一一年度より実施できるよう、必要な法制上の措置をあらかじめ講じ、二〇一〇年代半ばまでに持続可能な財政構造を確立すると明記されました。ここまで言われましたので、抜本的税制改革の中で消費税をどうなさるおつもりか伺います。 野に下ることは恥ずかしいことではありません。恥ずべきは、政権にあらんとしていたずらに迎合することです。総理、毅然としてお進みをください。御一緒に参ります。 関連して、社会保障費の二千二百億円削減についてお尋ねをいたします。 昨年の質問で、もはや乾いたタオルを絞っても水は出ないと申しました。しかし、政府は来年度予算でも乾いたタオルを絞ろうとしました。挙げ句、やっと二百三十億円は滴り落ちましたが、あとは出ませんでした。できませんでしたと素直に言えばいいのですが、つじつま合わせのために訳の分からないことを言っていますので、質問をいたします。 その話は、日本の年金が厚生年金しかなかったころにさかのぼります。そのときは、給付の二割を国が持つという約束になっておりました。ところが、年金会計は積立金などを持っていて余裕があるということで、国は支払を延ばして借金にしてきました。この借金がたまりにたまって平成元年時点で何千億円かになっていました。ここで政府は奇妙なことをしたのです。一兆五千億円持ってきて、借金を今返すのではない、これは今後の利息の分も入れてあるからそのまま置いておいて、国にまた貸してほしい、当然利息は払うと言ったのです。その利息で健康保険組合などに毎年約二百億円ずつを補助してきました。 ここで、本年度の二千二百億円削減についても理解しづらいことがあったことを指摘します。今年度の二千二百億円削減のうちの一千億円を、財政が厳しいという理由で二百億円の補助をしてきたその健保組合から出させることにしてあったのです。二百億円出して一千億円取り上げるというのは理解できません。よしよしとなでた後でぶん殴るのは禁じ手です。 来年度のつじつま合わせの話に戻します。 今お話ししました一兆五千億円をこの際清算することにしています。清算すれば一千三百七十億円出てきて、それに二百三十億円を足して一千六百億円、道路特定財源からの六百億円でちょうど二千二百億円になると説明しています。 ここまで申し上げたことを御理解いただけた方は少ないだろうと思います。分からないということを分かっていただくために申しました。無理なつじつま合わせはしない方がいいと思います。 総理、もう一度申し上げます。乾いたタオルを絞ってももう水は出ません。潔く社会保障費の二千二百億円のシーリングはなしと言われませんか。お尋ねをいたします。 次に、外交問題について伺います。 昨年末からイスラエルによるガザ空爆・侵攻などが行われ、双方合わせて千三百名以上の犠牲者が出ております。パレスチナ問題は宗教や民族の問題を根源に持つだけに、その解決は極めて難しい課題であります。当事者双方は各々停戦表明を行っておりますが、これ以上犠牲を拡大させないために、関係各国により一層働きかけを強めるよう要請いたします。 今後の国際情勢については、世界の多極化が進み、中国やインド、ロシアなどが力を増していく中、米国の影響力が低下するとの見方があります。こうした中、アメリカでは、大統領選挙でチェンジを掲げたオバマ氏が第四十四代アメリカ大統領に就任をいたしました。 今後の日米関係についてはまだ不透明でありますが、はっきりしていますのは、ヒラリー新国務長官が一昨年の外交論文の中で、二十一世紀における最も重要な二国間関係は米中関係と明記していることであります。加えて、オバマ新政権には中国重視の姿勢を示したクリントン大統領時代のメンバーが多く登用されています。こうしたことから、新政権が中国重視の姿勢に傾くと見る向きもあります。 拉致問題など様々な問題を抱える北朝鮮を隣国にする我が国として、オバマ政権が過度に対北朝鮮融和に傾かないよう、日本の立場を理解してもらう必要もあります。総理にオバマ新政権の米国との関係構築に向けた御所見について伺います。 また、オバマ大統領は、イラクからアフガニスタンへと兵力を移行する考えであります。我が国に対しても、アフガニスタン本土への自衛隊派遣を含む人的支援を積極的に求めてくると考えますが、この点についての御所見を伺います。 米国の優位性が低下していく中、軍事費が二十年連続で二けた増の伸びを示し、航空母艦の建造も検討している中国の軍事拡張の動きは、大きな脅威になりかねません。中国は、昨年の日中合意にもかかわらず樫ガス田の単独開発を継続するなど、東シナ海における海洋権益を拡大する姿勢も変わっておりません。 中国を始め近隣諸国と友好な関係の維持発展に努めることは重要でありますが、自由や民主主義といった価値観を共有するインドなどとの関係強化も同時に図っていかねばなりません。外務大臣時代、自由と繁栄の弧という極めて戦略的な外交方針を示された麻生総理の外交手腕に期待しております。総理、対アジア外交の基本方針を伺います。 私は、かつて防衛大学校に籍を置きました。大江健三郎氏に、防大生は日本の若い世代の恥辱だと言われたころであります。そのときに初代校長、槇校長は、もののふの道として服従の誇りを説きました。校長は軍人ではなく民間人から選ぶという時の吉田茂首相の方針で任命された校長でした。 その吉田首相は卒業式で、諸君は自衛隊在職中、決して国民から感謝されることも歓迎されることもなく自衛隊を去ることになるかもしれない。あるいは非難と誹謗ばかりの一生かもしれない。御苦労なことだと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎され、ちやほやされる事態とは、外国から攻撃されての国家存亡のときや災害派遣のときなど、国民が困窮し国家が混乱に直面するときだけである。言葉を換えれば、君たちが日陰者であるときの方が国民や日本が幸せなのだ。耐えてもらいたい。自衛隊の将来は君たちの双肩に懸かっている。しっかり頼むよと訓示をされました。 田母神論文が物議を醸し、シビリアンコントロールの在り方について改めて議論がなされる今日、吉田首相のお孫さんである総理が今、防大生に訓示をなさるとすれば、どのような訓示をされるか、是非お聞きをしてみたいと存じます。 次に、ソマリア海賊対策について伺います。 昨年のソマリア沖における海賊事件は百十一件起きており、前年比約二・五倍と急増しています。現在二十近くの国、機関が軍艦等を派遣して哨戒活動、護衛を実施しておりますが、国際社会に責任を有する我が国として、また自国の船を守るためにも手をこまねいているわけにはまいりません。 海上警備行動は、海上保安庁が対処できない危機の際に海上自衛隊に出動を命ずる措置であります。海上警備行動が発令された場合、自衛官の武器使用は警察官職務執行法の範囲内で行うとされています。人に危害を与えることが許される武器使用については正当防衛が求められるのですが、それで対応できるか心配をします。 海賊は自動小銃、機関銃、ロケット砲で重武装し、複数の高速艇で襲いかかっております。そこに行けというのであれば、国際基準に沿った適切な武器使用を認めるべきではないでしょうか。そうでなければ、国際社会の一員として他国と連携して頑張ってこいとは言えませんし、派遣される隊員の安全も確保されません。総理の御所見を伺います。 あわせて、集団的自衛権の行使について、これを禁じている内閣法制局の憲法解釈をこの際見直すお考えはないか、お尋ねいたします。 来年度の社会保障関係費は約二十四兆八千三百億円で、一般歳出の約半分を占めます。これだけ巨額の予算を差配する大臣は厚生労働大臣一人です。 ここ数年、国民に多大な不安を与えている年金問題に加え、昨年からは経済不況もあり、深刻な雇用問題が発生し、難問山積の中、社会保障全般に関する諸問題に対応するのには無理が生じています。国民の皆さんの生活不安を払拭するためにも、年金担当大臣を別に置かれたらいかがでしょうか。総理のお考えを伺います。 この際、社会保障番号に対する総理のお考えもお聞かせください。番号があれば年金問題の幾つかは発生しなかったと思いますので、お尋ねをいたします。 中期プログラムで、中福祉中負担の社会を目指すとされました。この中福祉中負担の具体的な姿をどう描いておられるのですか。総理は、国民に必要な負担を求めますと断言されました。現在の我が国は中福祉なのか、中負担の国民負担率を総理は何%とお考えなのか、お答えください。 総理は、「やねだん」と申し上げて、すぐお分かりになりますか。おととし、あしたのまち・くらしづくり活動、内閣総理大臣賞を受賞していますので御存じかもしれませんが、改めて紹介したいと思います。 「やねだん」とは、私のふるさと鹿児島県柳谷にある小さな集落の通称ですが、十年ほど前までは人口三百人、その四割が六十五歳以上という高齢化、過疎化した集落でした。しかし、新しい自治公民館長が就任したのを契機に、集落総出のサツマイモの栽培、土着菌を使った土づくり、オリジナルしょうちゅう造りなど、地元の特産品の開発を成功させました。その結果、平成十八年には全世帯に一万円のボーナスを支給できました。 また、空き家を整備してアーティストを募集し定住してもらうなど、様々な取組を成功させてきました。地域再生を文化活動にまで高めた結果、Uターンする人も出てきました。赤ちゃんも生まれました。まさにふるさとを再生させたのであります。 ここまで住民を動かした原動力は、中心になった方の強烈な自立意識であります。数々の感動的な言葉を述べておられます。 財源を外に頼っていたのでは、特に補助金に頼っていたのでは感動もありません。集落民の企画能力を発揮する場がなくなる。過疎地だから、高齢者の集落だからとあきらめるなんてやぼだよね。生きている以上魂を使わなきゃ。 暗い話ばかりが聞かれる昨今、勇気をもらう気持ちがいたします。総理、一度、「やねだん」に来られませんか。これはお誘いであります。 総理は、我が国の新たな成長戦略の一つに魅力ある地域の策定を挙げられました。地域活性化に向けての御所見を伺います。 昨年の質問で、私はNHKの大河ドラマ「篤姫」について触れました。篤姫の中でも登場します大久保利通は、参議に就任をいたしますときに、この難を逃げ候こと本懐にあらずとしたためました。国家のために命を投げ出すことを覚悟したのであります。そして、明治十一年、殺害の予告を受けていながら、いつもの道を護衛も付けずに従者だけを連れて通り、紀尾井町で果てました。西郷からの手紙を懐にした覚悟の最期であったと言われています。明治の志士たちの、国のためには金も名誉も要らない、命も要らないというひたむきな情熱に感動を覚えます。 この大久保の血を引いておられる総理の日本国に懸ける思いをお聞きして、私の質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇、拍手〕
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