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○尾辻秀久君 去る十七日は、六千四百三十四人が犠牲になった阪神大震災から十五年目の哀悼の日でありました。被害に遭われた方、肉親を亡くされた方、大変つらい日々を過ごしてこられたことと存じます。改めてお見舞いを申し上げます。地震国日本は、防災には万全を期さなければなりません。政府の積極的な取組を要請します。 さきのハイチ大地震では、各国に比べ、日本政府の対応の遅さが気に掛かりました。人命の大切さ、我が国の国際的支援への取組を考慮した今後の迅速な対応を望みます。 まず、総理にお尋ねしなければならないことがあります。政治と金についてであります。質問は二問です。 最初の質問は、総理御自身の問題についてであります。 自らの資金管理団体の偽装献金をめぐる問題で、母上から十二億六千万円を供与されていた事実を認め、約六億円もの贈与税を納付されました。世間の常識とは大きく懸け離れております。修正申告をすれば一件落着とお考えですか。脱税の認識は本当になかったのでしょうか。国民の納税意識にどういう影響があると考えておられるのでしょうか。これまで秘書の責任にして逃げるのはひきょうであると言ってこられたことにどのようにけじめを付けられるのでしょうか。 総理は、この問題で何回か謝罪をされております。昨日、我が党の大島幹事長が何をおわびするのですかと尋ねましたが、お答えはよく分かりませんでした。そこで質問です。仰いで天に愧じず、俯して人にはじずといいます。天に恥じるところありやなしや、お尋ねをいたします。 政治と金の二問目であります。民主党小沢幹事長の金の問題についてであります。 この件で、現職国会議員を含む小沢幹事長の秘書経験者三名が逮捕されました。これに対して小沢幹事長は検察と断固戦うと表明し、総理は戦ってくださいと後押しをされました。野党時代には国策捜査とまで発言された総理が、現在は行政府の長、つまり検察を指揮する立場で、検察と戦えと言明されたのです。これは検察への圧力になりませんか。総理の御認識をお聞きします。 次に、鳩山内閣発足後の最初の通常国会の冒頭でありますので、総理の日本国への思いをお聞きいたします。 総理は、昨年、就任後の所信表明演説で、無血の平成維新と表現されました。確かに、昨年夏の総選挙で自由民主党は惨敗して下野、内閣は民主党を中心に交代をしました。しかし、それをもって維新とは呼べません。維新と称するなら、近代化を推し進め、欧米諸国に追い付くべく白い雲を見詰めて坂を上っていった先人たちの心意気に倣うべきです。 冒頭、天に恥じるところありやと問いました。恥じるところがあるのなら即刻辞職してください。ないと言われるのなら、日本国の総理です、倒れて後やむ気概でやってください。明治維新に熱い思いのある薩摩の人間としてこのことを申し上げて、質問を続けます。 憲法改正についてお考えをお尋ねいたします。 五年前に総理は独自の憲法改正試案を発表されました。自衛隊を軍隊として認め、集団でも個別でも自衛権を持つようにしたい、地方がより大きな権限を持つ地域主権に転換する、国会を一院制とするなどなどの内容であります。総理の五年前の試案は生きていますか。憲法改正が総理の視野に入っているのか、お伺いします。 昨年の総選挙の際、私の地元鹿児島で驚くべき事件がありました。民主党の候補者が主催した集会で掲げられていた党旗は二枚の国旗日の丸を切り刻んで上下につなぎ合わせたものでした。この問題を麻生総理に指摘された当時の鳩山代表は、我々の神聖なマークであるからきちんと作らなければいけなかったと国旗の尊厳には一言も触れずに答えておられます。国旗・国歌に敬意を表するのは国際社会の常識であります。民主党では国旗を掲揚し、国歌を斉唱することはあるのでしょうか。民主党の中に国旗・国歌に対する様々な意見があることを承知しておりますので、総理の日の丸・君が代についてのお考えを御披瀝願います。 昨年暮れ、中国国家副主席の訪日に際して、一か月前告知ルールを破り、天皇陛下との会見が設定されました。これは天皇の政治利用ではありませんか。日中関係の重要性は認識するものでありますが、あの時期、ルールを破ってまで会見する必要があったとは思えません。小沢民主党幹事長は、内閣が判断したことについて、天皇陛下がその意を受けて行動なさるのは当然のことだと語ったと報道されています。陛下に対する尊崇の念が伝わってきません。総理は、象徴天皇制をどのように理解しておられるのか、お尋ねをいたします。 鳩山内閣は政治主導確立関連法案を今次国会に提出されると伺っております。マニフェストで政治家百人を政府入りさせて政治主導を強化するとされていたものが実行に移されるものと思います。事務次官会議は廃止をされ、内閣法制局長官の答弁の機会もなくなるようであります。法制局長官の答弁廃止には、憲法解釈を時の政権の都合で変更しないという不文律が崩れるおそれを感じます。 そこで、政と官の役割分担についてきちんとした理念、思想があるのか、お尋ねをしたいのであります。あるのは、官僚排除の論理だけではありませんか。結果として国会軽視になりませんか。 三権分立の下、行政府と立法府はそれぞれ独立した存在です。立法府である国会は、行政府である政府と対峙して審議することがその本分ではないですか。有権者たる国民は、与党であれ野党であれ、国会における発言や政策づくりに期待して投票するものです。与党になって政府に入り、それで事足りるわけではありません。 菅財務大臣は、憲法のどこにも三権分立とは書いてないと主張しておられます。多数党が内閣を組織し、立法権と行政権の両方を握るという意味でしょうか。総理は議院内閣制の下での三権分立に関してどのように考えておられるのか、お尋ねをいたします。 我が国官僚制度は、明治の改革以来続いてきた制度であります。長い歴史の中で培ってきたその力量は、今後も国家のために役立つものと信じます。日本の最大、最高のシンクタンクであると考えます。排除の論理ではなく、活用するのが人事の要諦です。政治主導で官僚を使いこなすことが政治家に求められていると私は思いますが、総理のお考えを伺います。 五五年体制下、与党自民党と野党社会党との対立軸は、憲法改正・保守・安保護持と憲法護持・革新・反安保でありました。総理の考えておられるこれからの対立軸は何でしょうか、お尋ねをいたします。 私は、その一つが小さな政府か大きな政府かであると考えます。そこで、鳩山内閣は小さな政府を目指すのか、大きな政府を目指すのか、国民負担率を何%にするのか、数値で答えてください。 このことに触れますと、我が国の社会保障関係費は何で賄うのかという議論をしなければなりません。私は消費税を上げるほかないと主張しております。 総理は消費税の議論は四年間やらないと言っておられます。一方で、報道によれば、仙谷大臣は議論やるべし、菅大臣は、議論は先送りというものの少し踏み込んで福祉目的税導入を選挙公約にして国民に判断してもらうとの発言をされており、閣内の意見も様々です。議論するのかしないのか、社会保障関係費増大にどう対処するのか、鳩山総理のお考えをお聞かせください。 次に、財政演説に関して質問をいたします。 初めに、財政問題について、新たな財源のために無駄の排除ができたのか伺います。 補正予算を含め、これからの予算は鳩山内閣での予算であります。さきの総選挙で約束された政策が財源の裏付けを伴って実行されなければなりません。民主党の候補者は、マニフェストを掲げ、当面の政策実現に必要となる十二兆円は無駄をなくすことで生み出せると主張をしました。無駄をなくせば、天下りを排除すれば十二兆円はすぐに出てくるという話を、テレビを含めあらゆるところで繰り返しました。 さて、いかがなったでしょうか。事業仕分は国民、マスコミ注目の下で行われました。ところが、それによって削られた予算は、補正の凍結で約三兆円、事業仕分で当初は七千億円、最終的には約一兆円にすぎません。総理、無駄の排除で十二兆円を確保できるともう一度約束できますか、答えてください。 一昨日の財政演説をお聞きいたしましても、どのような財政見通しに立っておられるのか分かりません。分かるのは、国債増発でほとんどの財源を賄うということです。 今年六月をめどに中期財政フレームを策定すると報じられていますが、六月と言わず、一刻も早く財政再建の道筋を国民に示す必要があります。財政破綻の懸念が少しでも出てくると、国債金利が上昇し、マーケット、実体経済に深刻な影響が出ます。総理は二十二年度予算案での国債発行額を適正な額であるとお考えでしょうか、お尋ねします。財政の健全さと規律をどのようにして市場に納得させるのか、菅財務大臣、お答えください。 予算編成についてお尋ねします。どこが責任を持って主導するのか分からないからです。 政権発足当初は、マニフェストにあるように、財務省ではなく国家戦略室が政治主導により国家ビジョンをつくり、予算を策定すると言われましたが、実際にはその機能は果たせませんでした。今国会での内閣法の改正により国家戦略室は局に格上げされますが、予算取りまとめの権限を持てるようになるのですか。あるいは、菅大臣が財務大臣になったことで、再び財務省に主導権が移るのでしょうか。主導権が不明確なまま、結果として財政規律が緩んだままで予算編成作業が進められたのではないでしょうか。財務大臣の御説明を求めます。 このところ、予算執行、事務手続に当たる地方の不信感が強まっています。先般、長妻厚生労働大臣は、地方六団体に子ども手当の財政負担を求め、同時に謝罪をされました。地方の理解を得られるのか、原口総務大臣にお尋ねをいたします。 一昨年九月のリーマン・ショック以来、世界経済は大変な状況に陥りました。景気後退や株価暴落に見舞われる中、各国の自国経済てこ入れと国際的な政策協調により、昨年辺りから徐々に世界経済は回復してきました。 我が国においては、麻生政権下で、百年に一度との厳しい認識の下、累次にわたる経済対策を進め、特に昨年五月には経済危機対策十五兆円を盛り込んだ第一次補正予算を成立させました。その効果が出始め、また中国、インドなど新興国向け輸出の増大などにより、昨年四月から九月まで半年間の実質GDPはプラス成長に転じ、先行きに明るさが戻ってきていました。 しかしながら、秋の政権交代により状況は一変しました。鳩山内閣は、第一次補正には不要なものがかなり含まれているとして、約三兆円の予算の執行を停止し、景気回復に水を差したのであります。さらに問題は、その執行停止にした予算を、よく精査してみるとやっぱり必要だったと、来年度の本予算で復活していることであります。半年以上の予算の空白期間をつくり、結局は元に戻しただけではありませんか。総理に、第一次補正予算執行停止とその復活に関しての認識をお聞きします。 景気が悪化する中、輸出で一息ついている大企業はまだしも、地方経済や中小企業は一段と厳しい状況にあります。総理は、現在の我が国の経済状況をいかに判断され、将来をどう見通しておられるのか伺います。 心配していることがあります。経済苦を理由に自ら命を絶たれる方が増えるのではないかということです。特に三月の決算期が心配です。これまで自殺対策については何度も質問をしてまいりました。自殺対策に万全を期すよう強く要望をいたします。内閣府参与に任命した、NPOライフリンクの清水代表を宝の持ち腐れにしないでください。 鳩山内閣発足以来、普天間移設問題は、総理を始めとする関係閣僚が勝手に発言をし、迷走を続けています。 沖縄は、第二次世界大戦中、多くの民間人を巻き込み、激しい地上戦が行われた悲しい記憶が詰まっている島であります。何の裏付けもない、思い付きとしか言いようのない発言が、県民や米国をどれほど混乱に陥れているかお分かりですか。 普天間基地は、米軍が住民から勝手に奪った土地に造られ、その後、銃剣とブルドーザーによって拡大されました。軍事的な優位性から基地は今もその位置にありますが、市内のど真ん中に存在するため経済発展が阻害され、また安全面、治安面への不安があることから、絶えず県民に返してほしいという声があります。その声にこたえるべく、普天間飛行場の全面返還合意から十四年もの間、私どもは地元と真摯に向き合いながら、米国と交渉し、あと一歩のところまで参りました。それを白紙にしてやり直すというのであれば、県民に踏み絵を踏ませてはいけません。ここで、総理御自身の覚悟を示してください。 また、これ以上この問題を先送りすれば、日米同盟に更に大きな亀裂が生じることになります。日本の安全保障の観点からのビジョンをお示しください。 インド洋補給支援活動について伺います。 海上自衛隊によるこの補給活動は、平成十三年十二月から開始され、アメリカやパキスタン等の艦船に約八年間で九百三十九回の給油を行い、国際社会から高い評価を得てまいりました。我が国が国際社会の責任ある一員として取り組んできた活動ですが、結果的に日米同盟の深化やインド洋の海上交通路の安全を守り、石油の安定確保を図ることにもつながる極めて重要な活動であったと高く評価しております。インド洋補給支援活動の総括を北澤防衛大臣にお願いいたします。 あわせて、先日の記者会見で、今後類似の貢献を求められていると言っておられますが、具体的に説明をしてください。 我が国の撤収を受けて、中国海軍が代わりに補給活動を引き継ぐことを検討しているとの報道が見られます。中国は、二十一年連続、軍事費を二けた以上増強し、空母建設も行うなど、その軍事拡張は大きな脅威となりつつあります。この中国がシーレーンの確保にも大きな影響を持とうとしているのであります。総理の御認識を伺います。 鳩山内閣は、年間平均約九十億円の補給支援に代わり、五年間で四千五百億円に及ぶアフガニスタンに対する民生支援策を表明しました。巨額の金を投じるならば、どのような支援なのか明らかにすべきです。 昨日の答弁では抽象的に支援策を述べられましたが、我が国が直接実施できるものではなく、結局はカルザイ政権に金を渡すだけの支援になりませんか。汗をかかずに金だけを出すという小切手外交との批判を受けないためにも、昨日の答弁よりも更に踏み込んだ具体的な内容をお示しください。 社会保障の給付の在り方に関してお尋ねいたします。 私どもは、サービスや施設の提供、いわゆる現物給付により社会保障の充実を図ってきたのですが、現内閣は、お金を配る現金給付に大きくかじを切りました。その代表的なものが子ども手当であります。 総理は、昭和三十年に公開された「幼きものは訴える」という映画を御存じでしょうか。父親が戦死し、母親も亡くした幼い子が、その子に付いている恩給年十万円欲しさに身内でその子を奪い合い殴り合う姿に絶望して、最後に身を投げるというストーリーでした。同じ境遇にあった私には、忘れることのできない映画であります。 子ども手当は両親がいない子には支給されないケースもあるやに聞きました。本当でしょうか。現金給付にするとこうなるのです。 子供は、家族にとっては宝であり、国の宝、地域の宝でもあります。子供を家族と社会が一緒に育てる、その意気込みはよしとします。ただ、それを具体的にどう進めるかであります。現物給付か現金給付かの議論は古くからありました。が、保育所の充実など現物給付にウエートを置いた方がいいという答えが既に出た問題と私は理解しております。給付の在り方について、総理の御見解を伺います。 次に、若者自立塾について伺います。 事業仕分においては、若者自立塾は廃止と判定されました。同事業は、平成十七年度からスタートし、ニートなどの若者の職業的自立を支援するため、合宿形式による生活訓練や労働体験などを通じて就労に結び付けていくものであります。 事業仕分においては、研修生一人当たり約五十四万円掛かっている、抜本的に見直しをすべきと決め付けました。一人の若者を助けるのに五十四万円は高過ぎますか。人間の価値はそんなに低いものでしょうか。何年も引きこもっている人たちが六二%も就職したのに、効果が小さいのですか。これでは、コンクリートから人へではなく、人より金です。鳩山内閣の基本的な姿勢を問うべく、総理の御所見を伺います。 政府は、マニフェストに書いてあったということで八ツ場ダムの中止を宣言しました。地域住民の長い間の御労苦、御努力を無視して継続事業も廃止にしました。一方で、小沢幹事長の地元で建設中の胆沢ダムは、全国のダム事業を見直す検証作業の対象外となりました。なぜ八ツ場ダムは中止で胆沢ダムは続行なのですか。最後に、この件に関する鳩山総理の御見解を求めて、質問を終わります。(拍手) 〔内閣総理大臣鳩山由紀夫君登壇、拍手〕
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