尾辻 秀久｜おつじ ひでひさ｜
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物言わぬご遺骨を胸に抱いて

平成二十三年度全国戦没者追悼式　追悼の辞　日本武道館にて

　天皇、皇后両陛下のご臨席を仰ぎ、ご遺族の皆さまのご参列のもと、全国戦没者追悼式が行われるにあたり、参議院を代表し謹んで追悼の言葉を申し述べます。
　熾烈を極めた先の大戦により、多くの方々が戦死されました。また、広島、長崎への原爆投下をはじめとする空襲、そして沖縄での地上戦などによって多くの国民が犠牲となるなど筆舌に尽くしがたい惨禍がもたらされ、私たち国民、遺族は戦後必死にこんにちまで生き抜いて参りました。これら犠牲となられた方々のご無念、そして最愛の肉親を喪われたご遺族の悲しみ、国土が荒廃するなかで日々の糧にも事欠くなど、戦中戦後の長きにわたり厳しい生活を強いられた多くの方々のご労苦に想いをいたすとき、万感胸に迫り来るものがあります。
　こんにち人類はなお、争いを地上から根絶できずにおります。戦後六十六年が経過し、戦争の記憶が風化していくなか、私たち日本国民は、国内においてはあの惨烈を極めた戦争の記憶を改めてしっかりと次の世代に語り継ぐとともに、国際社会においても、あらゆる戦争を根絶するよう訴え行動していかなければなりません。本日の式典に臨み、平和の尊さを強く胸に刻み、戦争のない平和な世界の実現に向け、さらなる努力を続けていくことを固くお誓い申し上げます。
　私たちは、ご遺族の皆さまへの援護施策がさらに充実、改善されますようこれからも全力を尽くして参る所存であります。衆議院議長のお言葉にございましたので、私からも申し上げます。私自身、遺骨収集には何回も何回も参りました。物言わぬご遺骨を胸に抱いて、もしこのご遺骨が何かおっしゃりたいなら何をおっしゃるのだろう・・・そう想いながら帰ったものであります。今なお、ご遺骨収集すら終わっていない私たちは残念であります。今後とも、こうしたことにも全力を挙げることを、改めてここにお誓いを申し上げます。
　ここに戦没者の方々のご冥福をお祈りするとともに、暑さ厳しい折り、ご遺族の皆さまにおかれましては、くれぐれもおからだに気をつけられますよう、心から祈念いたしまして追悼の言葉といたします。　
　平成二十三年八月十五日参議院副議長　尾辻秀久。